ITベンチャー・外資の健康経営 リハビット産業医

ITベンチャーと外資系企業に特化した産業医事務所「リハビットHC」のブログです

店子の生き残り戦略・健康経営編

[content_block id=144 slug=blogpost-si]今回はベンチャー企業の多くに当てはまるであろう、オフィスビルへの入居者としての振る舞いについての記事になります。自社ビルとテナントの違いは一軒家とマンションの違いのようなものですが、同じ建物中に別の企業・別の集団がいるということを意味します。集団生活には集団生活のマナー、それから知っていると得をするする情報・考え方というものもあるわけで、そこについて今回は考えたいと思います。

もくじ

  1. 雑居であることのリスクを減らそう
  2. 雑居のメリットを活かせ!

雑居であることのリスクを減らそう

産業医の仕事は書類さばきと面談、それにオフィスの中の環境を整えること…という考えを持っている方もおられると思います。もちろんそれも重要なのですが、オフィスの中だけのことを考えていては、成果は上がりにくいと感じています。例えば生活習慣病の改善プロジェクトを立ち上げたとして、社内のおやつを見直しました、だけでは十分な成果は上がらなさそうですよね。飲み会や自宅での食事についてコメントしたり、近くのランチスポットのメニューについて考えたり、オフィスの外にも目を向けて、きちんとシナジーの効いた施策にしていく必要があると思います。

まず幾つか、店子として抱えてしまうリスクを考えてみます。

感染症リスク

オフィスビルのテナントとして入居している企業であれば、必ず持っておくべき視点だと思います。例えば夏場の食中毒対策。例えば冬場のインフルエンザ予防。せっかく会社の中では対策を取ったとしても、それが水泡に帰してしまうことはあり得るのです。社内のドアノブすべてを消毒しても、トイレに行ったことでで病原菌ゲット。1階のコンビニで盛大に咳をしている人が居たら。すし詰めのエレベーターでは逃げ場がありません。

「同じ釜の飯を食った」仲ならぬ、「同じビルの店子」どうしの足を引っ張りあいは避けたいところです。もちろん行き帰りの電車なども含めれば特に空気感染のリスクとなる箇所は無数にあるのですが、滞在時間が長い場所で密度の高い接触が想定される関係についてはケアが必要で、対策が可能なように思うのです。

受動喫煙リスク

時代は公共の場での禁煙に向かって動いていますが、共用の喫煙所があるビルもあるかと思います。私が顧問をさせていただいている企業では年齢構成が若いこともあり喫煙率はかなり低いところが多いのですが、中途入社の方などを中心に数名ずつはいらっしゃいます。そのような方たちにもお話をしていく中で禁煙を勧めているのですが、「喫煙所がある」というのはそうした方々の強い意志を挫く要因にもなっているようです(まあ結局路上やビルの裏に出てしまえば喫煙所がなくても据えちゃいますので、本質的には「吸う人がビル内にいる」ということが問題なのかも)。

生活習慣病リスク

コンビニで脂ぎったスナックが売っている、つい買ってしまう。よくあることですよね。たまには悪くない、という考え方もありますが、売っていなければ買わないものではないでしょうか。何故売っているのかというと、そういう商品が売れるからです。同じビルの他社がジャンキーな嗜好で溢れていたら、そのビルのコンビニは御用達ハイリスク商品で溢れてしまいます。

色々なリスクを挙げてみましたが、対策はどのようにすればよいのか?答はシンプルです。「みんなでやる」こと、これに尽きます

雑居のメリットを活かせ!

よくよく事例を当たってみれば、小さな企業でも、いや、だからこそ変わった給与体系を持っていたり、休暇や社員の活動支援についてのステキな制度を開発した組織の例には事欠きませんが、そういったところには人が集まり、業績が上がるようになっているのではないでしょうか。決して余裕があるから変わった制度を導入したのではないはずです。狙いがあっての施策のはず。「福利厚生」と総称されるこうしたファクターは、使い捨ての出費ではなく、有効に使っていくことで売上を増大させ、内部コストを削減することに貢献します。健康経営の施策も同じです。そのことを理解せずに、できるだけケチケチと…という発想で判断を下そうとする方がいらっしゃることは、実に嘆かわしい。健康経営は大企業の特権ではなく、ベンチャーだからこそ考えるべき「経営施策」なのです

さて、そうは言ってもベンチャーには困難が多い。

  • カネがない(留保がないうえ、小規模なので施策の単価が上がりがち)
  • ノウハウがない(経験がない)
  • ヒトがいない(担当が付けられない)

だがしかし、大企業にはできるのに…と諦めるのはまだ早い。なぜ大企業ではできるのか。上にあげたような要素を持っているから。では、ベンチャーも寄り合ってみてはどうでしょう?

感染症対策をブーストしよう

感染予防のキャンペーンを合同で張ってみてはどうでしょうか。廊下やトイレに注意喚起の張り紙をしたり、エレベーターホールに除菌スプレーを用意してみては。ビル管も巻き込むのがおすすめです。

また、インフルエンザなどの予防接種について、小さな企業だとクリニックが設けている人数の要件を満たせず出張接種の対象にならないケースもあります。ですがビル単位なら、この問題は解決。人数が増えて複数日程が組めれば、仕事の都合で受けられないという方も減らせるでしょう。

健康診断のオプションを増やそう

上の出張予防接種を合同で受ける、というような施策は健康診断でも有効です。受診日の選択肢が増えたり、追加検査のオプション導入が可能になったりするかもしれません。

禁煙キャンペーンを張ろう

皆でやめれば怖くない。もちろん一人で吸う人は一人でも吸うのですが、なんとなく群れちゃってもう一本…というようなことは減るのではないでしょうか。仲間がいるという連帯感がなくなると、辞められる方も居るのではないでしょうか。また禁煙教室のようなイベントも、対象者の数がある程度多ければ考えられるかもしれません。そうした経済性の観点からも、自社だけでなくビル全体でのキャンペーンというのは考慮に値すると思います。

コンビニの品揃えを変えよう

消費性向は店舗の品揃えに影響し、極端な場合には店舗の撤退やブランド変更などにも繋がります。ビル全体で女性が多ければオーガニック商品が増えたり、ナチュラル的な店になったりするのです。健康経営の施策で連帯を組むと、自然と社員が健康になる環境を作ることもできるのではないかと考えています。あるいはもっと踏み込んで「ウチら、今度から◯◯の対策を一緒にやることにしたので、お店にも協力していただけたらうれしいです。会社として、◯◯系の商品についてはプッシュしていきたいと思ってます!」と、Win−Winになるような提案をお店に直接持っていくなんていうのはどうでしょうか!?

ビル管と集団で渡り合おう

あまり想定したくはないのですが、ビル管理会社の対応が不十分・不誠実というケースも無くはありません。エアコンの効きが悪いと思うのですが…と言っても「そんなことはないです」「構造上の不可抗力」などという回答が来たり、いつまでも約束された改善策が施されなかったりというケースを見たことは、(多くはありませんが)経験としてあります。ですが、泣き寝入りするにはまだ早い。他のフロアではどうなのか?ビルの北側ウイングでは?と、他社の事例を聞いてみると、解決可能な可能性が高い問題については、「やっぱりなんとかなるのでは」と自信を持って言えるようになると思うのです。お土産話を持って交渉のテーブルに再度ついてみてはどうでしょう。また、交渉そのものを集団で行うのも考えられます。二枚舌三枚舌の対応はできなくなりますし、ノウハウの共有も強力な武器になるはずです。

挙げたのはあくまで例ですが、ノウハウ・資金・人員、これらの問題はすべて「集まって大企業のように振る舞う」ことでかなり解消されるはずです。成果が上がり始めればアピール次第で注目をあびることも可能かもしれません。ベンチャーであることを言い訳にする者は、ベンチャー経営の資格なし

リソースに限りのあるベンチャーだからこそ、知見の共有・あるいは集団化によるメリットの活用というものを真剣に考えて、労働環境を改善し、メンバーの健康を守り増進することに注目してほしいと考えます。大企業もベンチャーも関係なく、そこに働くのは同じ人間なのですから

健康診断の心得

先日はストレスチェックについての記事を書きました。今回は健康診断についてです。

もくじ

  1. 健康診断の概要と法的要請
  2. 社員の健康は会社の問題
  3. 状況に基づいた対応をとることが重要

 

 

健康診断の概要と法的要請

ストレスチェックが義務化したのは2015年ですが、健康診断はずっと歴史が古く、1912年の工場法からの制度といわれています。

健康診断の歴史:

「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と労働安全衛生法・第66条に定めがあるように、業種や従業員数によらず健康診断の実施は必要です(罰則規定もあります!)。

一方、従業員側からすると「面倒だな」「忙しいのに」「結果を見たくない」などネガティブな感覚も持ちがちなイベントかもしれませんが、健康診断を受ける義務は社員の側にもあるのです。同法第66条5項・7項にそれぞれ「事業者が行なう健康診断を受けなければならない」「健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする」との規定があります。

 

社員の健康は会社の問題

もちろん、今回の趣旨は義務だから健康診断はやらないと…というものではありません。

言うまでもないことですが、就労は生活の大きな部分を占めており、その環境や内容は個人の健康に影響しうるものです。何か健康上の問題があるときに「環境を変えることで問題が消失・軽減されるかも」と考えることは自然な発想と思いますが、環境を個人で変えることは困難な場合が多いものです。また、生活習慣の改善は継続できないと結果につながらないものです(そもそも「習慣」って継続するものを指しますよね)が、それが難しいというのはよく知られたことです。誰かに言われたり、見られたりしているからうまくいく、ということも(理想とは異なるとしても)実際には結構あるわけで、一人では達成できない、失敗してしまう…かもしれません。従って、対応が組織的に行われるとよい…というのは、成果にこだわった際には妥当な要請です。

また、会社からしても、健康診断の価値は十分にあります。心身のトラブルを放置するとどうなるか考えてみると…

  • 不調 > パフォーマンス低下、作業ミス増加
  • 病欠 > 受注機会損失、プロジェクト頓挫、周囲の負担増等
  • 退職 > 採用・教育コスト、風評低下→採用困難、and more?

個人の健康が会社全体の成果にも影響することを考えれば、放置して良いという判断は(道義的な面をさしおいても)無いのではないでしょうか。少なくとも、経営上の検討に値するはずです。

会社の業績は基本的に社員ありきで成り立ちます(だから雇用するわけです)。その社員が欠けたら、会社としては機能を失うことに等しい。そうした事態が生じる原因として「心身の健康」は無視できないと考えます。

離職率の統計

平成27年度の厚生労働省統計では、全職種の平均離職率は15%程度とされています。情報通信業に限っては10%と比較的低めです。そのうち「死亡・傷病」と明記されているのが1.7%、40代以上で増えていくようです。不慮の事故等も含まれるでしょうが、「個人の事情」とされるものにもある程度は心身不調関係の理由が含まれていると考えれば、少なく見積もっても年間で0.2-0.3%程度の社員が健康上の自由で職場を去っているということになります。

 

状況に基づいた対応をとることが重要

ストレスチェック関連でも同様のことを書いているのですが、健康診断の意義は「心身の情報収集=就労を含めた生活の効果測定」であり、「行動変容や環境調整の検討材料」であると考えます。法的な要請としては就労が継続可能かどうかの判定が必要ですが、疾病予防にも役立つということは誰しも理解できるのではないでしょうか。

  • 1次予防:前疾病段階での生活習慣の評価
  • 2次予防:潜在疾病の早期発見

ただ当然ですが、状況がわかったから病気がなくなる、病気になりにくくなるわけではないですね。きちんと対応を取る必要があります。狙いが妥当で、実効的な方法で、適切に実施されること。そこで重要なのは「専門知識」「組織についての理解」「当事者(従業員)の認識」「経営層の支援」が必要です。まさに衛生委員会と産業医の出番、となるわけです。

 

以上、健康診断についての心得をお話しました。健康診断は業績に関与するヘルスケア・マネジメントのPDCAの基本だ、というのが私たちの考え方です。

ストレスチェックをどう活用するか(心構え編)

2015年12月にストレスチェック制度が義務化されて一年半ほど。2回目の実施を終えた企業もあるのではないでしょうか。私が入っている企業でも、面接指導のフェイズに入ったところがちらほらと出てきました。

もくじ

  1. 産業医とは長いお付き合いを
  2. ストレスチェックとは
  3. 結果を成果につなげる施策

産業医とは長いお付き合いを

去年に面談をさせていただいた方が点数を回復していたり、部門としてデータが良くなっていたりすると、たとえデータの上だけでもちょっと嬉しくなります。良くなったけど、どうしてますか?どんな変化がありましたか?と、他の業務に余裕があれば聞いてみています。他の方にも汎化できることもあるかと思うので。

逆に、経時的変化で心配になるケースや、部門の実情を知った上で見るデータの意味であるとか、今後について考える材料もたくさん出てきます。

こうしたフォローや分析継続して入らせていただくケースの醍醐味ですし、長期的に関わることについては病院やクリニックの主治医と同様のメリットがあると考えます。新鋭企業こそ、是非産業医とは黎明期からの長い信頼関係を築いて欲しい、と思います。

ストレスチェックとは

そもそもストレスチェックとは何か、という説明をしていませんでした。

ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答) に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。「労働安全衛生法」という法律が改正されて、労働者が50人以上いる事業所では、2015年12 月から、毎年1回、この検査を全ての労働者※に対して実施することが義務付けられました。 ※ 契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間 労働者は義務の対象外です。 引用:厚生労働省資料より

これまでは身体的な部分にフォーカスした健康診断のみが義務でしたから、「メンタルヘルス系の健康診断」のような理解をしている事業所が多いようですね。大雑把にはそういうことでも良いと思うのですが、もう少しだけ掘っておきましょう。

ストレスチェックの実施に関わるルールについては健康診断と似た部分が多いのですが、内容については実は健康診断ほど厳格な項目が決まっているわけではありません。

法定のストレスチェックは、調査票を用いて、「職場のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」の3つの領域に関する項目により検査を行い、ストレスの程度を点数化して評価するものです。 引用:厚生労働省資料より

上記の3カテゴリの意味については、また機会を改めて説明します。ともかく、これらについての質問をするということです。標準的な57項目の質問というのはあるのですが、上記の条件さえ満たしていれば、現状では項目を増やしたり減らしたり改変したりしても良いのですね。また、実施に医師や保健師が関わることが必要ではあるものの、医療機関で受けるということは一般的には想定されません。これを読んでいる方の組織においては、オンラインでの受験というケースが多いのではないでしょうか。「自席でスマホで回答する」ケースも実例として経験しています。

事後対応としては、以下の3点が基本となります。

  1. 健康診断と違って、原則的に会社は個人の結果を見ることができない
  2. 「高ストレス」と判定された個人にはその旨通知をし、希望した場合は医師の面接指導を受けさせねばならない(この場合、結果の開示が可能になります)。
  3. 実施が完了したら、その旨を労働基準監督署長に届け出ねばならない。

やっぱり、「新しい健康診断的なものが増えて、今回は実際に外出しなければいけないわけじゃないけど、アフターフォローが多くて面倒だなあ」と感じている担当者も多いようです。

結果を成果につなげる施策

義務ですから、健康診断にしても、ストレスチェックにしても、従業員に受けさせないというのは論外です。ただ、義務だから…というだけで、多少なりとも従業員の時間を費やし、取りまとめにも労を費やし、業者にコストを払って実施してもらっているということはないでしょうか?こうしたケースは少なくないように思います。これを改めると、コスト抑制組織マネジメント改善の嚆矢となること請け合いなのですが…今回の本題は、ここです。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

このフレーズは野球の野村克也氏のことばとして有名ですが、古くは松浦静山という剣客の『常静子剣談』に見られるものだそうです。当然実際には、斬り合いでの敗北でも、野球の負けでも、経営上の困難でも、そして心身の健康問題であっても、「負け」や「異常」を単一の原因に帰すことが難しいケースが殆どでしょう。全くわからないこともあり得ます。しかし原因について全く考えないというのは、同様のケースを繰り返す蓋然性を高める行為であるように思います。仮説であっても原因について考えることが、次の状況を良くするためには求められるのです。

  • 個人の技量不足により成果が上がらず苦しんだのならば、それを補う研修・指導を。
  • 新人への組織的なバックアップ力が足りなくてメンタル不調を産んだのであれば、体制の立て直しを。
  • 部門内での業務量の偏りが心身の負荷を産んだのであれば、可視化や平準化の施策を。

ひとつひとつの事例を分析し解決策を検討していく中で、全体の組織構造の問題が見えてきたり、打つべき施策が出てきたりするのです。

オンラインでのストレスチェックでは、全社での傾向や部門ごとのデータ集計を提供しているサービスが少なくありません。こうしたレポートも合わせて、対応を今日から始めましょう。とはいえ「負け」の原因がどこにあるどのようなものか、というのは非常に判断が難しい場合もあります。特にマスとしての傾向分析でなく、個別の対処についてはそういうことが起きやすい。例えばそれが個人の資質に由来するのか、或いは主には組織由来のものであるか(これは業務や関係との相対的な問題であることが多いので、絶対的に個人だけの問題ということは、本当はあまり考えられないです。逆もまた然りなのですが…ここでは比率の問題としてどちらか、ということで書きます)。業務上の困難に由来するものなのか、困難に立ち向かうはずのマインドが足りていないのか。こうした問題の分析は、横断的に事例を見ている(統計ではなく、事例を複数見ているということ)立場から行うのが最適であり、産業医はまさにそのポジションに居るのです。また、原因の改善には組織ぐるみのアクションが必要になることが多いと考えます。組織の構造や体質を知りつつも、内部の関係に関わる利害に物怖じせず、かつ親身にアドバイスしていけるのは産業医だから、といえるでしょう。

ぜひ経営に関わる方も現場のマネジメント層もそして新人さんであっても、目に見えている問題が改善しうるものであるという認識で、分析や対処に産業医を交えるという発想を持っていただきたい。定期訪問のたびに相談の機会はあるわけですが、わけてもたくさんのデータが生まれるストレスチェックはいいチャンスなのです。ストレスチェックは上述のように若い制度ですが、今後同じような結果が(個人結果にしても組織全体の分析にしても)毎年続いて出てしまうようでは、何もしていない、経営としてはゼロどころかマイナスです。ベンチャーのような若い組織であればあるほど、構造の病理が根を張る前に、分析ツールとしてのストレスチェック(・健康診断)を活用してほしいと考えています。

職場巡視チェックリスト

オフィス系企業のための、職場巡視のためのチェックリストを公開します。自由にご活用ください。ご要望はコメントやメールで。

  • 衛生委員会とセットで巡視をする場合を想定したフォーマットになっています。
  • 定量的な評価を可能にするよう、25項目を0〜3点で評価する形式になっています。
  • 項目数は多いですが、前回の点数を残しておいて、アップデートしていけば採点は比較的迅速に済みます。

11_職場巡視チェックリスト

why community health? 組織的ヘルスケアのすすめ

産業医・リハ医のヤマコーです。個人のFacebookはこちら産業医というのは病院ではなくて企業や役所など、人が集まって働いているところで活動する医師です。病気や怪我の診察をするのではなく、その現場(事業所、といいます)で働いているメンバーの健康を維持するための役割を担うポジションです。そうした会社での健康増進がいかに重要か、ということについて書いてみたいと思います。

もくじ

  1. 原因がある不幸は、もとから断つ
  2. 押してダメなら、もっと押せ
  3. 押した相手がもっとたくさん押してくれるように

原因がある不幸は、もとから断つ

怪我や病気には、これと言った原因が指摘できないものが多いです。一方で、いっときの不注意で怪我をしたり、乱れた生活習慣で体を壊したりということもありますよね。病院に行くようになる前に、日々の生活で問題があるならば、そこに介入することで予防ができるのではないか。臨床医は病院に来た「患者」を相手に診療を行います。産業医は「まだ患者でない」人も対象に活動をするのです。

押してダメなら、もっと押せ

健康のPDCAを回すこと。問題を問題として捉えて、修正を効かせること。それを続けること。 言葉で言えば簡単ですが、実践は非常に難しい、という話を別記事で書きました。一人では努力は続けにくいものなのです。でもそこで諦めたら、何も変わらない。 怪我を防ぐために、オフィスをキレイに整理整頓して、転んだり物が落ちてきたりしないようにする。 慢性的な残業からくる睡眠不足を食い止めるために、早く帰る日を作る。 ケガをするのは一瞬でも、予防は永く続ける必要がある。新しい習慣が定着するのには、3週間程度が必要であるということがよく言われますが、自分だけでは難しいことを長期間続けるには、周囲の協力や、時には強制が必要です。毎日顔を合わせて、いろいろな立場の人と関わる。それって、職場ならできるかもしれません。 予防にゴールはないですが、例えば「月間のケガの件数が減った」「健康診断の結果が良くなった」などの形で、成果を見ることも可能です。大事なのは、結果が出るまで続けること

押した相手がもっとたくさん押してくれるように

ある社員が健康になる方法を身につけたら、健康になるのはその人だけではないかもしれません。周囲でまだ行動を起こせていない同僚を巻き込んで社内に変化を起こしてくれたら、一気に成果が加速します。あるいは会社を出て、家族にもよい影響があるかもしれません。自律・自走式の健康人間をつくることが、自律・自走型の社会を作っていく。1枚のドミノが2枚、3枚のドミノを倒していくような、指数関数的な爆発が生じるのです。 こうなると昨今取り沙汰される医療のリソース不足も解決するかもしれませんし、社会に活気と余裕が生まれれば、健康以外にもメリットが生じてくるはずです。

なぜリハ医がITベンチャーの産業医を始めたのか

産業医・リハ医のヤマコーです。個人のFacebookはこちら

リハビリ病院への勤務の傍ら、多くのITベンチャー産業医をさせていただいています。リハビリというのは「病気や怪我で不自由がある人が、機能を回復すること」だと思っている方が多いと思います。そんなことをしている医者が、なぜ「企業の健康を管理する」産業医をしているのか、不思議に思われる方も居ると思います。今日はその理由について書きたいと思います。

 

もくじ

  1. リハビリが必要ないように、先回りしたい
  2. 健康のPDCAを回すことを、職場から
    1. ちょっと納得行かない方へ
  3. ITベンチャーで働くわけ

1.リハビリが必要ないように、先回りしたい

多くの方が考えるように、病院でのリハビリでは、怪我や病気で体が動かなくなったりした方に、もとの生活に戻れるよう、機能訓練を行っています。脳卒中なら左右どちらかの手足が動きにくくなったり、ものを飲み込むのが難しくなったりします。傷害を受けた部位によっては、言葉がじょうずに出なくなることもあります。骨折なら手足が動かせず(痛みのためだったり、安静のためだったりします)、活動量が下がることで筋肉が痩せて歩行や作業に必要な力がなくなってしまいます。そうした状態から、もとに戻れる保証は必ずしもありません。手足が二度と動かなかったり、食事を取れなくなってしまうこともあるのです。また、幸いにも機能を取り戻せたとしても、それまでの過程は辛く苦しいものですし、長期間を要することもあります。その間、家庭や仕事はどうなるのでしょうか?当たり前なのですが、「リハビリが必要になるような、病気や怪我はしないほうが良い」のです。

 

健康のPDCAを回すことを、職場から

まあ、病気になりたい、障害を負いたいと思う方はいないでしょう。ただ、それをどのように防ぐのかということについて具体的な対処をしている方は多くない、というのが産業医として企業に入ったうえでの実感です。関心がないわけではないけれど、何をしていいかわからない。或いはアイディアを持っていても、行動に移せていない。行動に繋がらなければ、成果も生じない。あなたの勤める会社で、同僚の営業成績が振るわないのに何の対策も講じていなかったら「まずいな」と思いますよね? あなたが声をかけなくても、きちんと上司が見てくれていれば指導が入るでしょう。それが会社の目的にかなったことですし、成果が上がらねば、お給料を払う側としては「割に合わない」。このように、会社での仕事には、現状をいち早く察知し、問題や停滞を解消するモチベーションがあるのです。それが、健康増進においては不足しているということが言えるのではないかと、感じています。PDCAを回すことが、健康に関してももっと必要だ。そう考えているのです(具体的な方法は、これから個別に記事を書いていこうと思います)。

 

PDCAを適切に、爆速で回すこと、そのためには環境を整えてやることが一番現実的なのではないか。「(病気になる前の)大人が毎日通う外の場所」、つまりは「職場」をその現場にしよう。これが、産業医をはじめたときの発想でした。

ちょっと納得行かない方へ

病気にはならないほうがいい。それはそうだけど、「健康であるために生きる」なんておかしな話だ、健康って何かを成し遂げるためのベースであって、目的じゃなく手段だろうーー、と思われる方もいるでしょう。そうですよね。でも、それを言うならば会社だって、利益を上げるのは手段ではないでしょうか(まあ、建前としては、少なくともそうでしょう)。世に実現したい価値があって、そのための駆動力として、利益が必要である。そこは大抵は正しいと思います。だから(本当の目的のために必要な)利益を上げるために、集まった人たちが助け合ったり檄を飛ばしたりしている。集まって取り組むから、多様性を活かした、継続的な努力ができる。そうして成果を上げれば、やりたいことができる。同じことが健康増進でも言えないですか?

或いは、そもそも健康って個人のことであって、どう向き合うかなんて勝手にすればいいだろうーー、という声もありそうです。これは極めて勿体無い考え方、いや、先入観だと思うのです。必要なのは、成果が上がる方法をゼロベースで考えることではないでしょうか?上の会社の話につながりますが、個人のことと割り切らず、みんなで・継続的に取り組むことができたら、成果が上がるのではないでしょうか。私は「そっちの方が面白い」と思うのです。

*ゼロベースで考えたら、そもそも健康って大事なの?となった方もいるかもしれません。私は医者のくせにそこも疑ってしまったけれど、いろいろ考えて今の活動に至っています。今回はひとまず上のように「手段としてでも重要」だ、と述べるにとどめます。もっとこの話は具体的に掘り下げたいところですので、また別の記事にて。

 

ITベンチャーで働くわけ

多少趣味の分かれそうな話をしました。ただ、実利主義であればこういう考え方に親和性が高いのではないかとも思っていました。そういうフィールドで、種まきをしよう。そう考えていました。しかし、たまたま縁があったベンチャー企業は、案外難しい現場でした。組織としての生き残りをかけたフェイズが続いていく中で、福利厚生という認識で捉えている健康の部分にリソースを割くのは難しい、といえばまあ納得なのですが、そこで引いていては話が進みません。私としては、クライアントが組織として生き残ることは当然ですが、よりしたたかに成長していくために、健康増進のための介入を活かしてほしいのです。ですから次に出てくるのは「健康増進をただの福利厚生と思ってるなんて、損してますぜ」というザックリした説明です。

 

組織が小さいことや若いスタッフが多いことは、柔軟性にはとても優れているのです。一度納得していただいて、一致・挙社体制で臨めれば、相対的には大きな成果を上げやすい。だからこそ、組織づくりの中に一本、「社員が快適に働けて、健康でいられる」という軸を通していただきたいのです。もちろん納得していただくまでいろいろな形でサポートしますし、その後もどんどん施策を打っていきます。大きな変革を恐れないこと、新しいツールなどに抵抗がないこと、そうした資質をITベンチャーという属性の組織は、たいてい満たしているのです。

 

そして、まだ若い社員が多いことは、まだまだ常識と言えない「会社で健康増進」を社会全体に広げていくうえで最適な種まきの場であると考えています。もちろんどんな年齢の方でも学習や適応というのは可能ですが、社会人として一定の期間を過ごす前の「常識形成期」に介入していくことに、強いモチベーションを感じるのです。

 

 

…少し長くなりましたが、「ITベンチャー専門の産業医」という名乗りを上げるようになったのには、こうした経緯がありました。企業の方も、あるいは医療職の方も、ご興味を持っていただけたら、是非一緒に何か形にしましょう。

ヘルス・マネジメント(健康視点からの組織改革)

ヘルス・マネジメント

健康と仕事の関係

組織に属する個人が最大能力を発揮すること、すなわち各個が心身の健康を維持増進していくことこそ、業績のブースターです。私たちは「生活の一部として、仕事が人間を育てる」という理念と、「すべての個人の心身状態が適合した状態で、仕事は成されるべし」という信念とを掲げ、日々の問題に切り込んでいきます。

​日常の一部として積み重ねていくことができるよう、良い職場を作りましょう。

 

チームマネジメント

「マネージャー」と呼ばれる立場の方に求められるのは何でしょう。

アウトプット、売り上げ、いずれも重要です。コスト意識、プロとして大切です。

どんな部門でも人間が関わって仕事を進めていく以上、メンバーの心身の健康こそは、最も原始的な資源です。有効活用できることは、マネージャー必須の素養なのです。健康管理も含んだ人材育成こそが、組織を育てる大きな使命ではないでしょうか。一緒に、溌剌としたチームを社内に作りませんか。

 

メンタルヘルス

身体と精神は密接に結びついています。精神活動が外界の影響を受けることは必定ですし、精神的なコンディションが身体のパフォーマンスを左右するのです。

大切にしていることとして、以下があります。

  • 【全般】別コミュニケーションを基盤とした「組織としてのサポート」
  • 【休職・復職等対応】目的意識のはっきりした、ビジネスのための治療戦略提案
  • ストレスチェック新制度にお困りのご担当者にも、有効活用を支援
  • 【予防】休職・離職の予防のためのTIPSを提供

 

マネジメント・コンサルティング

多くのメンバーと話して現場を回る中で、「健康」「ストレス」を通して見えてくる歪みがあります。まずは提案を聞いていただき、組織変革のために私たちの視野を活用してください。

事例:長時間労働者面談から〜▶
「部門間での残業時間の偏りを可視化したら、協力体制が自発的に生まれた」
事例:ストレスチェック対応から〜▶
「やり甲斐の無さを嘆く監査部門スタッフの人事考課KPIを関連部門の生産性改善ベースに改めたことで、部門間で根本を話し合う場が設けられ効率化した」